平成21年度宮城県原子力防災訓練「緊急被ばく医療訓練」報告

仙台医療センター緊急被ばく医療2次施設に指定されております。女川原子力発電所等で被ばくを伴う入院治療が必要な患者が発生した場合、通常の救命救急医療にくわえ放射線管理を伴う緊急被ばく医療を行うこととなります。仙台医療センターでは宮城県原子力防災訓練に参加し緊急被ばく医療の展開が適切に行えるよう備えております。
訓練実施日 平成21年11月17日(火)
参加行政機関 宮城県,石巻保健所
参加医療機関 仙台医療センター
石巻赤十字病院
女川町立病院
石巻市立病院
参加搬送機関 仙台市消防局
石巻地区広域行政事務組合消防本部
参加搬送機関 東北電力
目的
「宮城県原子力防災緊急時被ばく医療活動マニュアル」に基づき,原子力発電所において労災事故が発生した場合の緊急被ばく医療各関係機関の連携を,実際の訓練対応を通して確認する。
主な訓練項目
・緊急被ばく医療関係各機関の連携
・消防による汚染負傷者の初期,二次被ばく医療機関への搬送
・初期,二次被ばく医療機関による汚染負傷者の医療処置
・県による安全確認,安全公表
想定事故
女川原子力発電所3号機 原子炉建屋3階において,天井クレーンから資機材が落下し,2名(A,B)が被災する。
その後の復旧作業中仮置資材が崩落し1名(C)が二次被災する。
搬送医療機関 負傷者A、B : 石巻赤十字病院
負傷者C   : 仙台医療センター


仙台医療センターで行った訓練の状況を中心に報告する。
今回の訓練で仙台医療センターでは
1.緊急被ばく医療2次施設としての訓練実施
2.除染シャワーテントの活用検証
を主な目的事項とした。実際に訓練の様な事故が発生した場合には、
3.災害発生地域への医療チーム派遣
4.仙台地域の初期被ばく医療の展開 等の活動も想定される。

訓練進行予定
時間 県策定進行 仙台医療センターの対応
12:00 労災事故@発生
12:15 原対室からFAX発信 災害対策本部立ち上げ
13:00 労災事故A発生
13:15 石巻日赤救命セから電話連絡 被災者の受け入れ決定
受け入れ準備開始
15:00 救急車が仙台医療センター到着 除染テントでバイタルチェック
クイックサーベイ
救急処置室に移動
救急処置室で医療処置
15:40 医療処置終了 処置を終了
・スタッフの汚染検査
・養生解除
16:00 仙台医療センターの安全確認
安全公表(省略)
訓練終了

搬送されてくる患者の状態
左足下腿部 裂創(開放性骨折の疑い),
自力歩行不可,意識正常
負傷部位に“汚染有り”
(当初110Bq/cu⇒搬送時50Bq/cu)
外部被ばく“無し”,内部被ばく“無し”


訓練の様子
仙台医療センター内に災害対策本部を設置



災害対策本部では対応の手順を確認。
また、活動展開要員表に沿って活動する要員を確保。
この訓練では既に名前の書き込まれた表を貼り出し、訓練の進行等についてミーティングを行った。
(12:27)
搬送ルートの養生


仙台医療センターでの患者受け入れの決定に伴い施設内の養生を開始した。
養生資機材は2次医療施設から運び入れた。
訓練に備えて必要物品の確認を行い、持ち運ぶもの関してはキットとしておいた。訓練終了後はキット内で使用したものを補充して再び2次施設内に保管してある。
救急処置室の養生


救急処置を行う室内も仙台医療センターの職員が一丸となって養生をおこなった。
訓練前日に原安協のビデオにより学習しておいたのでスムーズに作業が進んだと思われる。
除染テントの組み立て


前年度に導入された除染テントの実用性を検証することも訓練の大きな目的でもあり、除染テントを運び入れセットアップした。
この除染テントは被災地でくみ上げた水でも浄化してシャワー水に利用できる機能、また、ボイラーによりシャワーに適した温水化機能を有している。
スライド板によりストレッチャーから臥床のまま移動ができ、除染が可能である。
除染に利用した温水は床部の水受けプールに蓄えられ、汚染が拡大しないようになっている
医療機器も養生


救急処置に使用する医療機器も各種ビニール類によりラッピングして養生をおこなった。
臨時管理区域設定


汚染箇所を露出して医療処置を行うエリアはろ紙シートを敷き、放射能マーク入りテープでその領域がわかるようにした。
また、臨時管理区域の周りにはバリアポールにエプコシートを巡らし汚染が拡大しないようにしている。
受け入れ準備完了

約1時間ほどで受け入れ準備が完了した。
患者の搬入経路は二通り考えられていたが今回はルート2により訓練を実施した。
・ルート1
・ルート2

患者到着


仙台医療センターの向かいにある宮城野原公園運動場臨時へリポートから15:03患者が搬送されてきた。
なお、今回の訓練では女川原子力発電所→牡鹿清崎総合運動公園臨時へリポート→宮城野原公園運動臨時へリポート間の搬送は想定訓練となっている。
除染テント


除染テント内活動手順に従い患者に声をかけ、反応を確認後バイタルチェック部位のクイックサーベイを実施。
既知の汚染部位以外に汚染があった場合は除染となる。
今回の訓練では既知の汚染以外汚染はなかったという想定であった。
救急車、救急隊員の汚染検査


患者を搬送してきた救急車、救急隊員を東北電力の放射線管理要員がサーベイ。
救急処置室


救急処置室内活動手順に従い、ライン確保部位等バイタルチェック部分をクイックサーベイ
医療処置


汚染部位を露出し医療処置の判断を下すとともに、汚染部位の計測を行う。必要により傷口モニターを使用する。
デブリードマンにより除染処置等創傷部の処置を行い、計測により除染の効果を判定する。
計測記録用紙

臨時管理区域退室前の精密サーベイ


鼻スメア、開口部の計測を行う。
汚染箇所の処置が終えた後は、医療処置による汚染がないかも含め全身の精密サーベイを行う。
救急医療処置終了


救急の医療処置が終了し、身体汚染もないという判定により更なる医療行為実施のため手術室、病棟へと搬送。
医療機器の養生解除


使用した医療機器の養生を解除。
汚染物は東北電力に引き取ってもらうこととなる。
施設の養生解除


搬送路、処置室の養生を解除
施設の放射能汚染検査


サーベイメータ、スメアにより施設の放射能汚染がないか確認する。
安全宣言は管轄保健所所長が行うこととなっているが今回の訓練では省略。
訓練後の反省会


訓練終了後仙台医療センター職員による反省会が行われ、改善点等検討した。
主な内容は、
・連絡はFAXだけでなく電話もほしい
・シナリオどおり作業を進めてしまいFAX内容を確認しながらそれに対応するという姿勢が乏しかった
・約50分で準備ができたのは良かったが、前日の準備もあったためであり日ごろから準備しておく必要がある
・除染テント内ではレールを挟んで行き来できないので、サーベイする技師は両サイドに配置したほうが良い
・見学者も含め青いガウンを着用してしまい役割分担が不明瞭となった
・シールド付マスクは曇ってしまいつかいずらい
・搬送ストレッチャーの養生シートはもっと枚数を増やしたほうが良い
・東北電力放射線管理要員との業務分担が不明瞭

等たくさんの意見が出された